自分より小さくなったお姉さんをそっと抱きしめる
自分の腕の中に収まるお姉さんは、とても可愛らしくて愛くるしい人だった
「大好きですよ」
「あっそ」
「つれないですね」
「知るか、三年もほっとったアホ」
「どうしたら許してくれます?」
「そやな」
「とりあえず、うちより身長低くなりや」
「はい」
「うん、ええ位置やな」
引き寄せて、お姉さんはキスをする
三年ぶりのキスは相も変わらず、優しくて、この上ない喜びが詰まっていた
「なあ」
「はい?」
「うち、ええ歳やねんけど」
「結婚とか興味あるんですか?」
「君とする結婚だけ興味あるな」
「そうですか。じゃあ、暫くしたらしますか」
「なんでしばらくやねん」
「まだ新入社員ですよ、俺。いやまだなってもないのか」
「就職したん? ここがあんのに」
「それも悪くないんですけど、やりたいこともありまして」
「へえ、なんなん?」
「秘密です」
662 : 名も無き被検体774号+ : 2013/03/20(水) 04:13:28.84 ID:x60gR+VC0
改めて席についてジュースを飲んだ
「一つ気になってたんやけど」
「はい」
「なんで夏にこんかったん?」
「……そうですね」
「連絡が来なくてムカついてたんで」
「君のせいやろそれは!」
「ですね。でもあの時の俺は本当にそうだったんですよ。恋人ができたのかな、って。だから三年溜めて、まずは社会人になって、もしダメだったら」
「ダメだったら?」
「ストーカーにでもなろうと思ってましたよ」
「どこまで本気やねん」
「半分。ストーカーは冗談ですけど、仮に彼氏さんがいるなら奪おうとは思ってましたよ」
「本気やな」
「そりゃまあ、お姉さんは僕の人生を変えた人ですから」
「言いすぎ……でもないんかな」
「うちの人生を変えたんは、君やしな」
「それは意外ですね」
「君はあの一週間をどう覚えとる?」
「妄想のような一週間ですかね」
「妄想て。雰囲気でんわ。でもうちにしたって、ありえん一週間やった。だってそやろ、家出少年かくまって、いろいろあって、恋して」
「でもそういうの慣れてると思ってました」
「よく言われるけどなあ、そういうの。うちかてただの女やしな」
「……そうですね」
「そこは同意なんやな」
「もう十八ですからね。お姉さんが普通にお姉さんに見えますよ」
「なんやそれ。ってか君、いつまでお姉さん呼ぶん?」
670 : 名も無き被検体774号+ : 2013/03/20(水) 04:19:07.62 ID:x60gR+VC0
「お姉さんって呼ばれるの、好きなんだと思ってましたよ」
「嫌いちゃうけど、今の君に呼ばれるんは違和感しかないわ」
「でも」
「なんやねん」
「名前で呼ぼうにも名前知りませんし」
「……ほんまやな、うちも君の名前知らんわ」
「名前も知らない人を泊めてたんですか、いけませんよ」
「名前も知らんお姉さんに付いてったらあかんやろ、殺されんで」
「ほな」
「はい」
「○○ ○○です、よろしゅー」
「○○ ○○○です、よろしくお願いします」
「ははっ、なんやねんこの茶番」
「っていうかお姉さん、意外に普通の名前なんですね」
「君は古風な名前やな。しっくりくるわ」
そのあともお姉さん、基、○○との会話は続いた
お客さんが何組か来て、ついいらっしゃいませと言ってしまったりもしたけど
俺はお姉さんの家に泊まることになった
679 : 名も無き被検体774号+ : 2013/03/20(水) 04:26:06.29 ID:x60gR+VC0
「コーヒーお願いします」
「飲めるん? ってそや、薄くせなな」
「そのままでいいですよ。あれ以来濃い目のしか飲んでませんし」
「なんで修行しとんねん」
「○○と同じ味を覚えたかったから」
「……君、照れずにようそんなこと言えるな」
「鍛えましたから」
「それ絶対間違っとるわ」
差し出されたコーヒーに口をつける
強めの苦味が口の中でふんわりと滲んで、これはこれで嫌いじゃない
「ほんまや、飲めとる」
「三年も経てば飲めますよ」
「敬語はいつやめるん?」
「唐突ですね。やめませんよ」
「変な感じやな」
「そうですか? これで慣れてしまってて」
「だってもううちら恋人やろ?」
「ああ、はあ、そう、ですね」
「なに照れとんねん、やっぱ子供やなあ」
「いやあの、今のは突然だったので」
三年前と違って会話はすらすらとできた
三年も会っていなかったからか、話したいことが山のようにあった
暫くして、変わらないあの言葉
ほな、寝よか
690 : 名も無き被検体774号+ : 2013/03/20(水) 04:31:54.32 ID:x60gR+VC0
俺の腕に小さな頭を乗せて
縮こまるお姉さんは可愛らしい
優しく撫でると香るあの匂いに
急速に三年前を思い出す
「ずっと会いたかってんで」
「ごめんなさい」
「もうどこにもいかんよな?」
「卒業式には帰らなくちゃならないのと、家を借りてるのでそれを解約するのとありますね」
「うん、ここにいたらええよ」
「家賃は払いますから」
「いらんよ、借家ちゃうし」
「結婚資金にでもしておいてください」
「お、おう」
こうして思えばお姉さんは照れ屋だったのだろう
三年前の俺はそんなこと全くわからなかったけど
その内にお姉さんはすやすやと寝息を立て始める
俺の腕の中で安らかに眠る
こんな日々がこれから一生続くのだろうと考えたら
俺はなんとも言えない喜びに包まれて
幸福の中で眠りについた
それは春が訪れる
桜が咲く前のこと
692 : 名も無き被検体774号+ : 2013/03/20(水) 04:32:58.43 ID:x60gR+VC0
ってなわけで悪いがエロなしで終わり
俺九時間も書いてたのか
そりゃどうりで頭が痛いわけだ
読んでくれてありがとう、お前らお疲れな
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